広島高等裁判所岡山支部 平成8年(ネ)276号 判決 1997年7月17日
控訴人
岡山県信用保証協会
右代表者理事
長山博次
右訴訟代理人弁護士
岡本憲彦
被控訴人
齋藤しげ子
外四名
右五名訴訟代理人弁護士
余傳一郎
主文
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人齋藤しげ子は控訴人に対し、金一二五万三二六五円及びこれに対する昭和五三年四月六日から支払い済みまで年14.6パーセントの割合による金員を、被控訴人森内洋子、同清水保代、同岡田えつ子、同一井清子は控訴人に対し、各金三一万三三一六円及びこれに対する右同日から支払い済みまで右同割合による金員を、それぞれ支払え。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
主文同旨
二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二 当事者の主張
当事者の主張は、原判決の事実摘示のとおりであるからこれを引用する。ただし原判決二枚目裏三行目の「株式会社中国銀行」を「株式会社中國銀行」と改め、同行及び同三枚目表九行目、同一〇行目、同裏九行目の各「中国銀行」をそれぞれ「中國銀行」と改める。
第三 証拠
本件記録中の証拠関係目録に記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 請求原因について
原判決六枚目裏一行目から同二行目までを引用する。
二 抗弁(消滅時効)、再抗弁(時効の中断)及び再々抗弁(競売手続の取消)について
原判決六枚目裏五行目から同九枚目裏四行目までを引用し、行を改めて、以下のとおり付加する。
「 (二) 次に、本件競売手続の取消しが本件配当要求の時効中断の効力に及ぼす影響について検討する。
民事執行法五一条は、一般債権者が配当要求をするには、執行力のある債務名義の正本または仮差押えを必要としているのであるから、同法の下においては、配当要求は、前記(一)に述べたとおり、時効中断効の関係では差押えに準じると解するのを相当とする。従って、民法一五四条にいう差押えの取消しとは、配当要求についてみれば、配当要求が取り下げられたり、却下されたり、または配当異議の訴え等が提起されるなどして、配当要求に係る債権が配当から削除されることをいうと解するべきである。もとより配当要求の基本となる競売手続が取り消されるときは、配当要求はその効力を失うことになるが、競売手続の取消は、配当要求をした権利者の意思にもよらず、また配当要求が不適法であったことにもよらないのであるから、配当要求の時効中断の効力を失わせると解するのは相当ではない。
したがって、本件求償債権の消滅時効は、本件配当要求により一旦中断し、その後本件競売手続取消の時点から再度進行したものである。
(三) よって再々抗弁(本件競売の取消)は理由がない。」
三 結論
以上によれば、控訴人の本訴請求は理由があるから、原判決を取り消してこれを認容し、訴訟費用の負担につき、民訴法九六条、九三条、八九条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 浅田登美子 裁判官 上田昭典 裁判官 市川昇)